連日の真夏日、梅雨明けが早く長い猛暑に多くの方が疲れを感じていると思います。
体温を超えるような気温はまさに地球温暖化の産物。年々増加していますよね。
たとえ厳しい暑さでも、仕事や通学などの日常生活を当たり前にこなさなければいけません。そこで、自分の身体を元気に使いこなし、少しでも快適に過ごすポイントをご紹介します。
【水を必要量確実に取る】
今さら言われなくても水は十分取っていると思われる方が多いかもしれませんが、本当に必要なときに必要な量を取れているでしょうか。
外来で来院患者様にお聞きしても「飲んでいます。」「え、まだ足りませんか?」と言われます。時と量を、時間を追って考えてみましょう。
日常生活で自然に実行するためには、時間軸を思い浮かべてイメージし、身に着けていただくと良いと思います。
<起床後すぐ水分補給>
朝起きたら(ブログ2)まずはマグカップ1~2杯を飲んでみて下さい。
連日の熱帯夜で空調を夜通し使用しているからそんなに喉は乾いていないと思うかもしれませんが、飲んでみると意外とスイスイ飲めてしまいます。
以前も説明しましたが、寝ている間にはたくさんの汗をかいているので、その分を取ることが必要です。さらに、空調を使用すると空気が乾燥しているために、汗以外にもさらに皮膚表面から水分を失ってしまいます。夏場の夜具はタオルケットなどであまり保湿は望めず、さらに夜着も半袖半ズボンなど皮膚表面が出ていることが多いのもたくさん水分を失う理由の1つです。
そのためにも朝家を出る前にしっかり身体全体の潤いを取り戻しておくことが、快適に過ごす身体作りの第一歩です。
<「ちょこちょこ」水分補給>
外出時はいつでも飲めるように水分を携帯しましょう。
朝十分に飲んだから、目的地に着くまで大丈夫、という考え方はとても危険です。室内と10度近く、あるいはそれ以上温度差がある中で行動するので、沢山の汗をかきますし、かくとすぐに蒸発し、自覚している以上に水分を失います。また、気温が高いため、呼吸も荒くなり、呼気からも水分を失います。
のどの渇きを感じていなくても、身体の水分をどんどん失っているので、こういうときに「ちょこちょこ」と飲んで欲しいです。
よく「ちょこちょこ」飲みの量を確認されますが、口をつけて飲み始めると、身体が欲しいだけ気持ちよく飲めるので、まずは口がつけられるよう、いつも水分を携帯し、電車待ちや信号待ちなど短い時間でも「ちょこちょこ」水分を補給してください。
目的地について空調の中に入っての活動でも油断せず、さきほどの「ちょこちょこ」飲みを続けて下さい。
涼しくて汗をかかない環境だと、のどの渇きを感じにくいため、あまり自分から飲もうとしない方がいらっしゃいますが、前述のように、空調環境は乾燥しているので、皮膚からどんどん水分を失っています。水分不足になると代謝が落ち、疲労感を感じる原因になりますので、「ちょこちょこ」飲みをこころがけましょう。
口をつけて飲みやすい量でいいのですが、あえて目安とするならば、時間当たり100mlくらいは最低でも取るようにしてください。
<アルコール摂取時の水分補給>
暑い季節の仕事後帰りに、あるいは帰宅後家での冷えたビールなどのアルコール飲料は格別だと思います。ビールやチューハイなどのアルコールを飲むときに水も一緒に飲んでいますか?(ブログ7 グリーティングシーズンの楽しみ方)
以前もアルコールを摂るときの注意を書きましたが、アルコールは利尿作用があり脱水を引き起こします。
間違っても、はじめの一口を美味しく飲むために水分摂取を控えたり、水を飲むとお腹がふくれてビールが飲めなくなるからと考え、水を控えたりするのは止めてくださいね。
実は冬より夏の方が脱水による脳梗塞や心筋梗塞、肺梗塞といった血管が詰まってしまう疾患が多いのです。特に糖尿病、脂質異常症など治療中の方は、脱水により日頃検査して知っている値よりもはるかに高値になり、血管内で血液がより固まりやすい状態になるので、注意が必要です。
また、糖尿病治療薬の中には、尿中に糖を排出する作用の薬があるので、その薬を内服中の方は水分補給を確実に行い脱水にならないことが大切です。とても有効な薬なので、内服はしっかり継続してください。
<寝る前の水分補給>
寝る前に水分を十分飲んでいますか?日中の疲れのため夜間トイレに起きることなく朝まで熟睡したいからと水を飲まなかったり、飲む量を控えたりしていませんか?
朝起きたら、でも書いたように、寝ている間には汗をたくさんかきますし、空調環境だとさらに皮膚から蒸発による水分を失います。アルコールを摂った時は、利尿作用によりさらに身体は脱水傾向にあるので、安全に気持ちよく休むためには就寝前にたっぷりと水分を摂りましょう。
少なくともコップ1杯以上は必要です。直前に入浴されている方は、少し時間をかけもう少し多めに取ってください。
朝までにトイレに起きた方は、再度横になる前に水を追加で飲むようにしましょう。せっかく途中に起きられたので、脱水の危険をすみやかに回避したいものです。
【夏の食事で気をつけること】
夏の食事で皆さんは日ごろ何をこころがけていますか?
よく飲食店の看板に、夏バテしないためにスタミナをつけようと脂やボリュームが多い食事や辛い料理、食べやすさを狙った冷たい料理が見受けられます。
ただし、暑さのために身体全体が疲れを感じている時は消化器、つまり胃や腸も働きが悪くなっていることが多いので、前述のようなものばかり食べていると、かえって疲れが取れなかったり、胃の痛みやもたれなどお腹の調子が悪くなったりすることがあります。
身体に疲れを感じるときは、以下のことに注意して、食事を摂ってみて下さい。(ブログ3)
そして水分を十分とってゆっくり休むと、次の朝には随分身体が回復するはずです。
<温かい食事>
温かい食事をゆっくり摂りましょう。食欲のないときは、そうめんや冷やし中華などの冷たくさっと食べられるものを選びがちですが、十分噛むことなく勢いよく飲みこまれた食べ物は殆ど消化されることなく胃の中に流入するので、消化するのに時間がかかり、胃に負担がかかります。また、冷たい食べ物は、その状態が生や生に近い状態、あるいは一度火は通してあっても冷やして表面が消化しにくい状態になっているため、同様の理由で負担がかかります。
一方、温かい食事は冷たいものより少しゆっくり食べることが出来ますし、煮たり焼いたりすることで消化しやすい状態になっており、胃を冷やしてしまうこともないため、少しでも負担が減ります。
<油脂過多なメニューに要注意>
脂や油の多過ぎないメニューを選んでください。身体に疲れを感じると、ついついスタミナをつけなくてはと、焼肉やトンカツ、唐揚げなどの油脂がたっぷりなメニューを選びがちですが、ポトフのように肉も野菜もたっぷり入り栄養価は高いけれど消化しやすく負担が少ないものがオススメです。
季節の魚、特に近海魚の鰯、鯵、鯖などは新鮮なら刺身などの生で、また煮物や焼き物のように色々な調理方法で楽しめますし、この時期に摂りたい栄養も十分に含まれているのでオススメです。
<バランスの取れた食事>
食欲が低下してくると、つい好きなものや食べやすいものを重ねて取ってしまい、バランスが崩れがちです。この時期こそあえてバランスを考えて選びましょう。(ブログ3)
特に糖尿病を治療中の方は、どんなにカロリーは少なめでも、麺類一品のように炭水化物に偏った食事をすると、急な血糖値の上昇をまねき、コントロールの悪化につながります。
また、この時期スイカや桃、メロンなど、糖度も高く大きくて美味しい果物がたくさん出てきますが、量と食べる時間に注意しないと体重増加や疾患の悪化につながります。
果物は豊富なビタミン類を含み、朝食のデザートに食べれば疲れにくく代謝をすすめやすい身体を作るのに大いに役立ちますが、ブドウ糖や果糖などの単糖類を多く含むため、いきなり食べると血糖値の急な上昇を引き起こし、糖尿病が悪化したり太りやすくなったりします。
順番としては、食事のデザートの時がベストで、時間帯は朝食時か昼食時が良いでしょう。夕食後に食べると、明朝の血糖値や中性脂肪の上昇につながりやすいので気を付けましょう。
会席の最後に水菓子として出てくる量であれば、まったく問題なく楽しんでもらえます。
<塩分過多に要注意>
夏の外食やお弁当の味付けは一般に濃いことが多いため、気を付けないと塩分を摂りすぎてしまいます。熱中症予防のために水分と塩分の補給を、としきりと謳っていますが、塩分については食事で十分すぎるくらいとることができ、日中外での長時間の労働やスポーツをする場合以外、食間での補給は必要ありません。あらゆる食品の塩分が多めになっているため、高血圧症や腎臓病などの治療中の方は夏こそ減塩に注意が必要です。
和食であれば、メイン料理に味がついているものを選んだ時は味噌汁や漬物などをひかえると減塩できますし、洋食や中華では、ソースを別添えにしてもらったりかかっているソースをよけたりすることでも減塩できます。また、水分を食中食後に十分とることも重要です。
【暑い季節の運動について】
以前、健康的に過ごすには運動は欠かせないことをブログに書きましたが(ブログ4)、連日の暑さのために日常生活に疲れを感じてそれどころではないかもしれません。
また、特に外でのスポーツを楽しむ習慣のある方には、熱すぎて不安に感じたり、運動後今までになく疲れを感じたり、気持ちよく運動するのに注意が必要なくらいの気候ですね。
気温が高い時間帯は、空調等で涼しく過ごす必要がありますが、そのような環境で一日中動かずに過ごすと、代謝が悪くなり、頭や肩のコリ、腰痛、下肢痛、全身倦怠感など、不快な症状が出てきます。代謝の低下に伴い、糖尿病や脂質異常症で治療中の方は、コントロールが悪くなりますし、高血圧症や腎臓病にも影響があります。
注意するポイントをまとめるので、少しでも身体を動かすことで快適に生活していただければと思います。
<時間帯を選ぶ>
特に屋外スポーツは、暑い日中を避けて早朝か夕方に行いましょう。夕立の後などは、少しでも気温が低く安全です。
<水を携帯する>
運動前にたっぷりとれば後は終了後、と考えてはいませんか?
運動中は汗をかきますし、暑い時期は量も増加します。それだけではなく、気温が高くなると呼吸も荒くなり、呼気からも水分が失われます。のどが渇いたと感じる時にはすでに血管内の水分量は明らかに減少し、血液の粘度が増加してしまいます。
脱水が進行し、口渇を強く感じる状態になると、血流不足により手足が攣ったり、全身倦怠感が強くなったりして、熱中症を引き起こしてしまいます。
いつも水分は携帯して「定期的に補給する」ようにしてください。症状を感じて飲むのではなく積極的に摂取することが大切です。
<運動の前後に使用筋肉のメンテナンスを忘れずに>
運動前は空調のきいた涼しい室内にいることが多いので、しっかり準備運動をして筋肉を柔軟な状態にしてから開始することが重要です。1つは外傷の予防、そしてもう1つは熱中症予防です。柔らかくしなやかな筋肉であれば、安全にスポーツを楽しめますし、血流が豊富で筋肉内のエネルギー代謝・老廃物代謝も活発で、疲れがたまりません。
終了後もやりっぱなしではなく、クールダウンの時間がとても大切です。ホットな筋肉のままピタッとやめてしまうのではなく、動きをゆっくりにしてさらにストレッチを十分に行い、柔らかい元の筋肉に戻してあげてください。そのとき十分な水分摂取を忘れないようにしてください。
この一連の流れは、夏に限ったことではありませんが、気候が厳しく空調使用のために人工的に血流が悪くなっている筋肉に対して特に気を付けたいものです。
屋外でのスポーツだけではなく、ジムなどのインドアスポーツの際にも同様に心がけてください。
【休養を十分とる】
何と言っても、厳しい暑さや気温の変動による疲れを取るには、質の良い睡眠を十分にとることが大切です。(ブログ9 睡眠)
<室温>
熱帯夜のように暑い夜は空調で快適な温度を作り、ゆっくりと休むと良いでしょう。
みなさんも経験があると思いますが、これがなかなか難しいもので、起きて活動するときには快適でも寝ようとすると寒く感じたり、寝入りはそう思わなくも途中で寒くて目が覚めたりすることがあります。
朝方まで気温の低下が望めないようなときは日中の設定の+1~2度にして、できるだけ直接風が身体に当たらないように風向きを調節してください。
夜間から朝には気温が下がる予報の時にはタイマーを使うのも良いでしょう。
<夜着>
皆さんは何を着て寝ていますか?
真夏はパジャマや浴衣など上下肢を覆うものを身に着けない方も多いと思いますが、皮膚表面からどんどん水分が失われますし、室温によっては手足や肩などが冷え、風邪など体調を崩す原因にもなります。
できるだけパジャマは長袖長ズボンにすると良いでしょう。特に下肢は表面積が大きいので、暑い場合でもせめてボトムだけは長いものを選んでみて下さい。
<寝具>
寝具としてどのようなものを用意していますか?タオルケットでしょうか?
体温調節と保湿のために足先まですっぽりと隠れるものが良いと思います。皮膚からの水分蒸発を防ぎ、空調の冷えから守ってくれます。
また、首や肩まわりには大判のタオルをかけておくと、喉の湿度低下、乾燥を防ぎ、夏風邪の予防になります。皮膚が空調にさらされて冷えると、体温低下を防ぐために身体を丸めたり、立毛筋を収縮させたりするために、起床時に疲労感が残ります。
<入浴>
どうしても取れない疲れを感じた時は、38~39度くらいのぬるめのお風呂にゆっくり浸かり、冷房で冷えた身体を温めるというのもとても有効です。シャワーだけではなく、できるだけゆっくりとバスタブに浸かりましょう。
暑いと寝苦しいですが、冷えは却って疲れの原因になるので、自分が心地よい夜着と寝具を用意して、ゆっくり休んでください。寝る前にたっぷりの水をとることも忘れないようにしましょう。
【おわりに】
今既に厳しい暑さのために疲れている方、体調が思わしくない方も、1~4を参考に自分に合った過ごし方で、年々暑さが増す夏を少しでも心地よく過ごしてください。
今回の猛暑は上手に乗り越えられた方も、何度が繰り返す気候変動に体調を崩さないように、ぜひこの機会に意識して自分のペースを作ってみて下さい。